2017年9月1日金曜日

ゼミ紹介:「フランコフォニーの言語文化」廣松勲先生~後編~

前回に引き続き、「フランコフォニーの言語文化」をテーマとする、廣松ゼミのご紹介です。前編をまだ読まれていない方は、ぜひこちらからお読みください。


今回は、フランコフォニー(フランス語圏)を知るための、廣松先生お薦め映画情報第2弾。


画 を 通 じ て フ ラ ン ス 語 圏 ( フ ラ ン コ フ ォ ニ ー )を 見 て み よ う !

2回 日本版DVDのない作品
2回では、日本版DVDが発売されていない作品を中心にまとめてみました。
フランス語圏とはどんな地域なのか、そして各地域でどんな言語文化が育まれているのかを知るために、ゼミでは、次のような映画を見てきました。いずれも言語・文化・民族間の接触をモチーフにしており、かつ “ステレオタイプ/クリシェ”を存分に活用しながら、コメディータッチに描かれた作品です(一部コメディではない作品もあります)。当然ながら、このような映画に描かれる世界観を鵜呑みにしてはいけませんが、同時になぜそのようなステレオタイプが生じたのかを調べてみるのも面白いでしょう。
予告編はYouTubeなどでも閲覧できるものが殆どですので、興味のある方は是非ご覧ください。

1.カナダ・ケベック州の映画
「危機に瀕した文化」(原題:La culture en péril2008年.
カナダ元首相スティーブン・ハーパー時代の緊縮政策により、文化政策への補助金が大幅にカットされることになった。ケベック州出身の芸術家たちは、補助金をもらうために英語話者の役人たちによる面接試験を受ける必要があった。現実の文化政策への批判として作成された動画で、ケベック州の芸術家たちが多く出演しています。カナダにおける英語圏とフランス語圏の関係性を戯画的に際立たせる技法は、先に紹介した『ブレイキング・コップス』とも共通したものといえます。

2.カリブ海域諸島の映画:マルティニック島またはグアドループ島が舞台
②『はじまりの小屋』(原題:Case départ2011年.
⇒フランス本国に住むカリブ出身の兄弟が、ひょんなことから、植民地・奴隷制時代の時代のカリブ海域諸島にタイムスリップ!どうしたら「現在」に戻ることができるか…。フランス共和国の負の歴史を扱った映画で、恐らく初めてのコメディ映画だと思われます。フランスとカリブ海域との繋がりを歴史的に見てみる良いきっかけかも知れません。

マルティニック島:シェルシェール図書館
3.アフリカ諸国の映画:架空のアフリカの国、ブルンジが舞台
③『ボツワンガの鰐』(原題:Le crocodile du Botswanga2014年.
⇒フランス本国に住むボツワンガ出身のサッカー選手とそのスカウトマンが、ボツワンガに凱旋帰国。しかし、そこは“ボツワンガの鰐”と呼ばれる独裁者が支配する国だった…。独立以後のアフリカに登場した数々の独裁者の中でも、現コンゴ民主共和国のモブツ・セセ・ココの支配体制をパロディにした物語。彼はかつて「ザイールの豹」ともあだ名されていました。

④『お前もか?』(原題:Na Wewe2010年.
1994年頃、悪化した民族対立を背景とした内戦が進行中のブルンジにて、或る乗り合いタクシーが山間を走っていた。突然に現れた戦闘員に足止めされ、乗客は一人一人、どの民族出身か(ツチかフツか?)を答えさせられる…。旧ベルギー領のブルンジを舞台にした短編映画です。必ずしもコメディではありませんが、タイトルと関連した“落ち”があります。多くの映画祭にて賞を受賞した作品です。

4.マグレブの映画
マグレブ(北アフリカ諸国)の一国、
モロッコの料理
『ハラル特別捜査班
(原題:Halal police d’État2011年.
⇒パリで起きたアルジェリア女性外交官殺人事件を解決するため、2人の捜査官がアルジェリアからやって来る。はちゃめちゃな捜査を続けながら、殺人犯を突き止めようとするが…。アメリカの古い刑事ドラマのパロディである本作は、コメディアン・デュオ「Éric et Ramzy」が主役を演じ、“異文化間捜査”とでもいえるプロットが巧みに描かれています。

⑥『彼処に生まれて』
(原題:Né quelque part2014年.
⇒パリに生まれ育った主人公は、アルジェリアにある父親の生家の取り壊しを防ぐため、初めてアルジェリアを訪れる。主人公は目的を果たそうとする途上で、「アルジェリア」との繋がりを再発見することになる…。必ずしもコメディではありませんが、コメディアンのジャメル・ドゥブーズ演ずるアルジェリア人青年は道化役として物語を展開させていきます。また、本作品を鑑賞する際には『オデュッセイア』に代表されるような「故郷への帰還」というプロットとの繋がりを想起してみるのも面白いでしょう。

5.ヨーロッパの映画①:ベルギー(とフランス)が舞台
⑦『異常なし』(原題:Rien à déclarer2010年.
⇒単一欧州議定書とマーストリヒト条約が発効された結果、フランスとベルギーの国境沿いの税関は廃止されることになった。2人の主人公(フランス人税関吏とベルギー人税関吏)は性格も価値観も正反対にも拘わらず、運悪く協力して国境警備に当たるよう指示されるのだが…。極度のフランス嫌いを自称するベルギー人税関吏を演じるのは、ベルギー人のブノワ・ポールヴールド。彼は前回ブログで紹介した『神様メール』では神様を演じています。

6.ヨーロッパの映画②:スイスが舞台
⑧『ようこそ、スイスへ』(原題:Bienvenue en Suisse2004年.
⇒フランス在住のスイス出身の男性が、フランス人の妻と一緒に、祖母の葬儀のためスイスに向かうことに。そこで望外の遺産があることを知らされ、兄弟姉妹たちと分与することになるのだが…。フランス人の抱く「スイス文化やスイス人」のイメージを利用しながら、主人公の妻(フランス人)と同じように視聴者も不思議の国スイスを旅することになります。

7.フランスの映画:北フランス(ノール・パ・ドゥ・カレ)が舞台
⑨『ようこそ、シュティスの国へ』(原題:Bienvenue chez les Ch’tis2008年.
⇒南仏で働くうだつの上がらない男が、突然フランス北部に左遷されることになる。そこはフランスでも名高い“田舎町”であり、主人公はその地域に受け入れられるために孤軍奮闘する…。フランス北部のステレオタイプが、当該地域の住民の性格や生活様式のみならず、言語についても存分に活かされています。


モーリシャス島:首都Port Louis港
遠くに出掛けることが難しい方も、廣松先生お薦めのフランコフォニー映画で
フランス語圏の豊かな文化・世界に触れてみてください!

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